《MUMEI》 何年かかってもいい。 彼の口から切り出せるまでは、しっかり彼女の役目を果たそうと決めた。 なのに…。 「まさか三年も待たせられるとはね」 枕元に置かれた汚れた紙袋を指でつついた。 当時、彼が事故にあっても離さなかった紙袋。 有名なアクセサリーメーカーの袋の中には、メッセージカードがあった。 あたしへの誕生日の祝いの言葉。 プレゼントだ。 「でも嬉しいのか悲しいのか、分からないわね」 最後になるプレゼントなんて…。 いや、でも決めたんだ。 彼の為にも、あたし自身の為にも。 あたしは彼の顔を覗き込んだ。 もうすっかり大人の顔付き。良い男だ。 「早く起きないと、前へ進めないじゃない」 …そう言えば、眠り姫なんて物語があったっけ。 でもこれじゃ眠り王子だ。 「早く起きなさいよ」 そしてあたしを早くフッて。 思いを込めて、あたしは彼にキスをした。 ―懐かしい感触。 涙が出そう。 「大好きよ…」 そのまま彼の首元に顔を埋める。 彼の匂いもまた懐かしくて、胸が締め付けられる。 前へ |次へ |
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