《MUMEI》 愛しているから、別れる。 大人になったもんだ、あたしも。 そんなあたしの頭に、触れるあたたかな手。 「…えっ?」 ゆっくり顔を上げると、苦笑している彼の顔。 「ゴメン…。もしかして、待った?」 「っ!」 涙がボロボロと零れ落ちた。 「なっ何で今頃っ…! もう三年経ったわよ!」 「三年…。どうりで、キレイになったワケだ」 彼も泣きそうな顔で、あたしの頭を撫で続ける。 あたしは感情を堪えた。 このままじゃ、三年前と同じになってしまう。 「…で? 三年前のあたしの誕生日に言いたかったことって?」 「ああ…」 彼は周囲を見回し、紙袋で視線を止めた。 「アレ、取ってくれる?」 あたしは黙って紙袋を取って渡した。 彼は袋の中に手を入れ、小さな箱を取り出した。 「無事だと良いんだけど」 そう言って箱を開け、中身を取り出した。 指輪のケースみたいだ。 彼に悪くて、中身は見ていなかった。 「サイズ、変わっていないといいけど」 あたしの左手を取り、薬指に指輪をはめた。 誕生石の指輪…。キレイ。 前へ |次へ |
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