《MUMEI》

「オレと結婚してくれないか?」

「………はい?」

ぴったりはまった指輪を見ていたあたしは、思わず裏返った声を出してしまった。

「ずっと不安にさせたままなのはイヤだから…。結婚して、側にいれば平気かなって」

真っ赤になった彼から出たのは、予想とは全く違った言葉。

「…別れの言葉じゃなかったの?」

「プロポーズの言葉だよっ! …でも当時、さけられはじめたから、ちょっと不安だったんだけど…」

そりゃ、別れがイヤだったから…。

「で、どう?」

「あっああ…」

返事、今しなきゃダメか。


「…あたし、嫉妬深いわよ?」

「知ってる。でもイヤじゃない」

「束縛するよ?」

「良いよ。キミなら」

「しぶといし、しつこいし…。良いとこなんて、ないじゃない」

「あるよ。ずっとオレを好きでいてくれた。それだけで十分だよ。オレのこと、こんなに愛してくれる人なんて、他に誰もいない」

「確かに」

思わず納得してしまう。

「そこまでカクゴが出来ているんなら…結婚しましょう」

「うん、もちろん」

そしてまたキスをする。

二人のはじまりのキスを―。

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