《MUMEI》

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扉の向こうで、間の抜けた、え?という増井の声が聞こえる。


「なんだ?今、呼んだか?」


狼狽したような彼の声を聞いて、さらに確信する。

わたしは扉に向かって、大声で喚いた。


「助けて!!ここから出してッ!!」


切羽詰まったわたしの悲鳴に、向こう側で緊張が走ったのを感じた。

増井は扉を叩き、誰かいんのかッ!?と叫んできた。

わたしは必死に声をあげる。


「お願い!早く助けてッ!!」


叫んだ直後、


わたしの後頭部に、冷たいものが突き付けられた。

息をのみ、ゆっくり視線を巡らせると、

いつの間にか、背後に春蘭さんが立っていた。

彼女は忌ま忌ましそうな表情を浮かべ、舌打ちをする。


「…邪魔が入ったわね」


そうひとりで、呟くと、後ろに控えていた男たちに、中国語でなにやらわめきだした。

彼らは彼女の言葉に頷くと、闇の中へ溶け込んでいく。

男たちが姿を消してから、春蘭さんはわたしの顔を見て、言った。


「時間がないわ。さっさと終わりにしましょう」


そう呟いて、引き金を引く、

それよりも早く、



−−−−ガシャーーンッ!!



なにかが派手に割れるけたたましい音が室内に響いて、わたしと春蘭さんは驚き、顔をあげた。


そして、目を見張る。


大きなバイクにまたがり、窓ガラスを勢いよく突き破ってきたヤツがいた。

暗闇のせいで、顔がよく見えない。



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