《MUMEI》
現れたひと
.

そのひとは、バイクをドリフトさせると、それを乗り捨てて、地面に着地し、ゆらりと立ち上がった。

バイクは床を滑ったまま止まらず、コンテナに激突する。



金属がひしゃげる残響と、

白い煙りが立ち上る中、



現れた、そのひとの顔を見て、

わたしは、呆然とした。





「義仲……?」





インディゴのデニムに、ジャンパーを羽織った義仲が、こちらを睨み据えて立っていた。





******





−−−ものすごく、冷たい目をしていた。


暗がりでも、義仲の厳しい顔つきがはっきりとわかるほどに。

彼は、春蘭さんがわたしの頭に突き付けている拳銃を見つめ、なにやってんの?と、落ち着いた声で言った。


「香港じゃどうだか知らないけど、日本には銃刀法っつー法律があるんだよ」


この犯罪者が、と吐き捨てるように続けた。


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