《MUMEI》 . 心の中で叫んでいるうちに、義仲はわたしたちの目の前までやって来た。 彼は、狼狽する春蘭さんを見下ろすと、 −−−−パァァンッ!! そのまま、ものすごい速さで彼女の顔を平手打ちした。 春蘭さんは床に倒れ込み、うずくまる。持っていた拳銃は、床の上を滑って遠くへ消える。 解放されたわたしの縄を、ガラス片で切りながら、義仲は肩越しに彼女を見、唸るように言った。 「次やったら、鼻骨折るよ?」 言い捨てると、春蘭さんは顔をあげずに、黙って肩を震わせていた。 そんな彼女に、義仲はさらに言う。 「女でも手加減しない。俺は、裏社会の人間だからね」 わかるだろ?と尋ねると、突然春蘭さんは狂ったように泣き出した。 泣きわめく彼女を無視して、義仲はガラスを捨てると、わたしの手を取り、割れた窓の方へ歩き出した。 春蘭さんが追いかけてくるかも…と不安に思ったわたしは、ゆっくり振り返ると、 彼女はまだ床に突っ伏して、子供のように泣いていた。 . 前へ |次へ |
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