《MUMEI》
睨み合い
「あ〜あ、フラれちゃったねぇ修二。」
ずっと二人の会話を聞いていた美雪が割って入ってきた。
「でも凹む事ないよ!だってぇ、本当の彼女はぁ…」
急に甘えた声で修二にベタつく。
「美雪、それどういう事…?」
「アハッ!やっぱ加奈子は鈍いね〜。二股掛けられてた事にも気付かないなんて!まぁ、もっともあんたは義理側だけど?」
―裏切り―
そんな言葉が加奈子の頭をぐるぐる回った。
でもこの気持ち、何だろう…
悲しいっていうより
むしろ
うれしい…?
こんな…
こんな狂った人間と、もう関わるなんて御免だ。
「あれぇ?なんか以外に驚いてない感じ?あ!それともショック過ぎて言葉が出ないとか!?」
「フッ‥まさか…。その逆よ。」
ジッと睨んだまま、加奈子は口元だけ笑って見せた。
「…つまんない女。」
美雪も睨み返す。
その無言が冷たい空気を生み、部屋を満たす。
息苦しささえ感じさせる女二人の睨み合いの仲裁に入るかの様に、有馬は手を叩いた。
―パンパン!―
「そろそろいいかね?二人共。悪魔が目を覚ましましたよ。」
有馬のその言葉に、加奈子はハッと檻の方を振り返る。
いや、加奈子だけではない。檻の外にいる者達四人が檻に目を向けた。
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