《MUMEI》 どうにか体制を保つことが出来た。 「よし。 ゆっくりと上へ上がって来い。 いいか、ゆっくりとだぞ。」 「は…い……。」 翼をゆっくりと上下に振って、 上昇する。 「体制を崩すなよ……。」 グレイドがハラハラした様子で、 何度もそう呼び掛けてくる。 だが俺は応えられる程の余裕は無かった。 真っ白な壁をただ見つめながら、 必死に翼を動かす。 1メートル…2メートル…3メートル……。 高所恐怖症ではないが、 徐々に高くなるにつれて背筋がゾクゾクする。 そうしてようやくグレイドのいる所までたどり着くことが出来た。 「良くやったな。 下を見るなよ?」 床との差は約200メートル。 落ちたらただでは済まされない。 ごくりと生唾を飲み込んだ。 「じゃあ次はこれだな。」 グレイドは目の前に浮かんでいる灰色の物体を指差した。 それからその上についている、 キーボードのようなものに指で触れて行く。 前へ |次へ |
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