《MUMEI》 ケジメ. 将門の、爽やかな笑顔を見つめ、 わたしは瞬き、呟いた。 「告白の返事、まだしてなかったよね?」 わたしの固い声に、彼は笑顔を消した。 彼の真剣な顔を見つめ返して、わたしは静かに続ける。 「しばらく将門くんと一緒にいて、いろんな話をしたし、楽しかった。『普通のお付き合い』っていうのが、どんなに気がラクなものなのか、よくわかったよ」 わたしの台詞を聞いて、将門はどこか、ホッとしたような顔をした。 わたしは数回瞬いて、彼の目をまっすぐ見つめたあと、 「……でもさ」 と、小さな声で、呟いた。 「それだけ、なんだよね」 将門は、目を大きく見開いた。 わたしは彼から目を逸らし、手にしている花束を見つめる。 かわいらしいデイジーを見ながら、続けた。 「気楽で、楽しくて、落ち着けて、でも、そんな『普通のお付き合い』が、わたしにはどうしても、居心地が悪くてしかたなかったの」 将門と一緒にいたとき、 わたしはいつも、義仲のことを考えていた。 義仲だったら、何て言うか。 義仲だったら、どんな顔するか。 そればかり、頭の中で思い描いていた……。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |