《MUMEI》
ケジメ
.


将門の、爽やかな笑顔を見つめ、

わたしは瞬き、呟いた。



「告白の返事、まだしてなかったよね?」



わたしの固い声に、彼は笑顔を消した。

彼の真剣な顔を見つめ返して、わたしは静かに続ける。


「しばらく将門くんと一緒にいて、いろんな話をしたし、楽しかった。『普通のお付き合い』っていうのが、どんなに気がラクなものなのか、よくわかったよ」


わたしの台詞を聞いて、将門はどこか、ホッとしたような顔をした。

わたしは数回瞬いて、彼の目をまっすぐ見つめたあと、


「……でもさ」


と、小さな声で、呟いた。





「それだけ、なんだよね」





将門は、目を大きく見開いた。

わたしは彼から目を逸らし、手にしている花束を見つめる。

かわいらしいデイジーを見ながら、続けた。


「気楽で、楽しくて、落ち着けて、でも、そんな『普通のお付き合い』が、わたしにはどうしても、居心地が悪くてしかたなかったの」


将門と一緒にいたとき、

わたしはいつも、義仲のことを考えていた。


義仲だったら、何て言うか。

義仲だったら、どんな顔するか。


そればかり、頭の中で思い描いていた……。


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