《MUMEI》

そして取り出したのは、丸く平べったいロウソク。

そのロウソクには魔方陣が彫られていた。

「ボクも手伝ったんだからね。半日でやるには苦労したよ」

「コレで前回のケータイの件は水に流してやる」

そう言われ、セツカは言葉をなくした。

マカは黒き手を何とも思わず、部屋の隅にロウソクを置いていく。

最後に中心部に一つ置き、その前に立った。

「セツカ」

「はいはい」

セツカはマカと向かい合うように立った。

二人で手を合わせ、気を高める。

眼を閉じ、神経を集中する。

すると二人からゆらり陽炎のように、気が立ち上る。

ロウソクが一気に燃え上がった。

赤き炎が柱となり、部屋に光が満ちる。

そしてゆっくりと開いた二人の眼は、赤く染まっていた。

二人の放つ気と、五つの炎の光は部屋の闇を飲み込み、そして突如消えた。

「…ふぅ」

「う〜。今夜はゆっくり眠れそうだよ」

二人はぐったりとした。

ロウソクはすでに影も形も無い。

同じように、黒き手も無くなっていた。

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