《MUMEI》

「何ですって!」

振り返ると、アイツの顔が間近にあった。

うっ…!

この至近距離での笑顔は反則だ。

…何も言えなくなってしまう。

「何、オレ様がイイ男すぎて、言葉が出てこない?」

「んなワケ…」

ない、と言えない。

でも精一杯の抵抗で顔を背けると、いきなり顔を捕まれた。

「んんっ…!」

そのまま熱い唇と重なる。

「ん〜!」



胸をどんどんと叩くも、そんな抵抗なんてアイツには効かない。

―熱い。

唇から、アイツの熱が伝わってくる。

「ふっ…」

やっと離されたかと思ったら、アイツは唇をぺろっと舐めた。

「なぁっ!」

「今日の自主練、付き合ってよかっただろ?」

「どこがよっ!」

「秋の大会には、絶対に良かったって思えるぜ?」

…それは新記録を出すことを言っているのか。

「待ってろよ」

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