《MUMEI》

「儀式だなんて、大げさですこと。あんなもの、ただの食事です。」
「なら、認めるんだな。」

もう一歩。
触れるほど近づいて、見下ろす。10センチほどの身長差のせいで、彼の前髪に口づけできそうだ。
柔らかな花の薫りが、立ち上る。

「でしたら」

彼が、くい、と顔をあげた。
底冷えするような目で、こちらを見つめる。あんまり近すぎて、唇に直接、彼の吐息がかかった。

「私をどうなさいます?マッドサイエンティストので、サディストの生徒会長さん。」






頭が、白に染められる。







体を引こうとすると、細い指が腕を掴んだ。
ぱさり、とダリアが落ちて。

「存じ上げておりますよ。だって、ここにある植物は、毒草や麻酔作用のあるものばかりですもの。貴方が、人体に並々ならぬ興味をお持ちなことは、まことしやかに噂されておりますし。」

囁かれる言葉が、脳を揺らした。彼の胸に、手のひらが導かれる。

とくん。

「ほうら、私は生きています。呼吸だって、しているのです。」

とくん。

「貴方は、私をどうなさりたいのですか?」

とくん。

「きりひらいて、さいて、えぐりだして。
この血液が流れているのか、確かめたいのですか?」

私を殺したい?



瞬きを一つして、彼は首を傾げた。
ひねった肩口に、真新しい赤い跡。
薄い肌に、透ける血管。

「お好きにどうぞ。」

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