《MUMEI》
2000年 四月初旬
 2000年

 有名な預言者の世界壊滅予告で世間は浮足だっていたり、零年問題で各企業はビビりまくっていた去年なんざスキップしながらの年明けミレニアム。
 俺は、大手企業・桐条グループに就職、開発部保安課なんつぅ企業機密満載の部所に配属された。
 ペーペーの大卒新人にしては異例の好スタートである。
 っていうのも桐条の家系に連なる者って事での採用、つまりコネ入社というやつで入社したからだ。

「とはいえ、入社初日に社長室呼ぶことあらへんやろタケッチ」

 重厚な樫の木で作られた光沢を放つ扉。
 あかん、権力威光に屈服しそう。
 とはいえ、今やただのおっちゃんと甥っ子という関係ではなく、社長と部下の関係になってるわけで………。

「ま、いつまでも扉挟んで待たせるわけにもいかんしなぁ」

 最初が肝心、時間厳守、この就職難の時代に拾ってもらった恩を返さねば。
 腹を括っていざ参らん。

 コンコン


「失礼します、開発部保安課所属、霧錠・慶三郎です。御当主、おられますか」

「入りたまえ」

 扉の向こう側から聞こえてくるシヴイ声。
 桐条グループ当主、桐条・武治。
 その一言で小国の経済が動くとか、まことしやかに囁かれる経済界の重鎮。

「失礼します、御呼びとあって参上つかまつりました」

 なんやねん、家にいる時と喋り方は変わらんけど威圧感が半端無く膨れ上がってる。
 ぶっちゃけおっかないわ〜。

「うむ、とは言え今日の呼び出しはプライベートなものだ。だからいつも通りおっちゃんともタケッチとも呼んでくれ」

「は?はぁ、ほんならそうさせていただきます」

 いきなり拍子抜け。なんやねん、おっちゃんのカワイイオチャメかいな。

「さて、君は今、……確か開発部の保安課に配属されているのだったろうか?」

「はい、保安二課のペーペーです」

「ふむ、開発部の連中、機密三課の連中が今何を作っているか解るかね?」

 ………?どうゆうこった?現頭首であるおっちゃんが知らん代物を開発部の連中が作ってるのか?
 ん?まてよ。開発部機密三課の連中の指揮権って確か……


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