《MUMEI》

しばらく街の中を走り続け、ユウゴたちは適当に店を選んだ。
店舗に隣接して建てられた立体駐車場に入る。
すると予想とは違い、一階部分には多くの車が停められていた。
しかし上へ進んでいくにつれてその数は少なくなり、最上階にはおそらく従業員のものだろう数台の車しか見当たらなかった。
「ここらへんでいいだろう」
織田は言って一番端のスペースに車を停車させた。
「じゃあ、織田。外見張っててくれるか?」
「わかった」
織田は頷いて車から降りる。
ドアが閉まったのを確認してユウゴは後ろを振り返った。
「じゃあ、そいつ起こしてくれ」
「おっけー」
ケンイチは嬉しそうに笑うと男の髪を掴んで顔を上げさせ、その頬を数発殴りつける。
すると男は小さな呻き声をあげ、ゆっくりと目を開けた。
「おはよう、おっさん」
ユウゴは助手席の背から顔を出しながら男に笑いかけた。
男は状況が理解できないのだろう、何度も瞬きをしては車内を見渡している。
「おーい、おっさん。俺のこと知ってるだろ?」
ユウゴは言って軽く手を振ってみせる。
すると男は目を細めてユウゴの顔を見つめ、やがて何か唸りながら目を大きく見開いた。
「あ、やっと気づいてくれたか。じゃ、さっそくだけどさ、あんたに聞きたいことあるんだけど」
ユウゴが言うと、男は敵意のこもった目で睨んできた。

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