《MUMEI》
美術室で
.


−−−それから。



すっかり、元気を取り戻したわたしは、

久々に学校へ行った。








「あれだけ警告してやったのに…」



美術室を訪れたわたしに向かって、開口一番、川崎先生は呆れたように言った。

わたしは、どーもスンマセン、と適当に謝る。先生は眉をひそめて、ズイッと顔を近づけた。


「…気を失った君を介抱して、周りにもバレないように、君の家まで送ってやったのは誰だと思ってる?」


押し殺すような低い声に、ゾッとしたわたしは、先生ですッ!!と慌てて答えた。


「その節は、大変なご迷惑をッ!!」


バカ丁寧に言うと、川崎先生はようやく納得したようで、ヨシッ!と頷いた。


「死ぬほど感謝しろ」


吐き捨てるように言って、満足そうにニヤリと笑った。

わたしは引き攣り笑いをしながら、ハイ!!と元気よく返事をした。


わたしが春蘭さんに監禁されていた場所は、偶然にも櫻鷲会が使用していた倉庫だった。
あの日、増井率いる暴走族が、自分たちの縄張りを見回っていた際、その倉庫に立ち寄り、異変を察知したらしい。義仲も、そのとき、たまたま増井に付き合っていたので、あの場に居合わせたという。



…………おかげで、

頭を吹っ飛ばされずにすんだけど。



もし、あのとき、義仲たちが倉庫へやって来るのが、もう少し遅ければ、

今、わたしはこうして、先生と向かい合っていなかっただろう。


.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫