《MUMEI》

.

川崎先生はイーゼルに置かれていたスケッチブックを手に取り、パラパラとめくりながら、突然、なんでもないような言い方で、呟いた。


「義仲さんの婚約話は、凍結した」



……。

…………。

…………………えっ!?



「マジでッ!?」


わたしがつめよると、先生は深々と頷いた。


「李 春蘭側から、直接連絡があって、『もう少し慎重に事を運びたい』と言われたそうだ…ちなみに、君の名前は一切出ていない」


命拾いしたな、と、川崎先生はため息をついてスケッチブックをイーゼルに戻した。

その仕種を眺めながら、わたしは、義仲は?と尋ねた。


「お父さんに、なにか咎められなかったんですか?」


義仲のお父さんは、息子の縁談に力を入れていたと、以前、川崎先生が言っていた。

それが、うまくいかなくなったとしたら、相当怒ったことだろう。

ただでさえ、義仲とお父さんの仲は良いものではない。

義仲は、シメられなかっただろうか……。


.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫