《MUMEI》 . 川崎先生はイーゼルに置かれていたスケッチブックを手に取り、パラパラとめくりながら、突然、なんでもないような言い方で、呟いた。 「義仲さんの婚約話は、凍結した」 ……。 …………。 …………………えっ!? 「マジでッ!?」 わたしがつめよると、先生は深々と頷いた。 「李 春蘭側から、直接連絡があって、『もう少し慎重に事を運びたい』と言われたそうだ…ちなみに、君の名前は一切出ていない」 命拾いしたな、と、川崎先生はため息をついてスケッチブックをイーゼルに戻した。 その仕種を眺めながら、わたしは、義仲は?と尋ねた。 「お父さんに、なにか咎められなかったんですか?」 義仲のお父さんは、息子の縁談に力を入れていたと、以前、川崎先生が言っていた。 それが、うまくいかなくなったとしたら、相当怒ったことだろう。 ただでさえ、義仲とお父さんの仲は良いものではない。 義仲は、シメられなかっただろうか……。 . 前へ |次へ |
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