《MUMEI》

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穏やかな沈黙の中、


不意に、義仲が口を開く。



「もう、大丈夫なの?」



わたしは頷いた。義仲はホッとしたような顔をする。それから、面白くなさそうな表情を浮かべ、言った。


「…汐見は、なにしてたんだ?」


一緒だったんだろ?と尋ねられて、わたしは曖昧に頷いた。


「買い物してたけど、先に帰っちゃった。つまらなかったし。そしたら、男たちに捕まって…」


そこまで言うと、義仲は忌ま忌ましそうに舌打ちをし、『処刑』だな、と呟いた。

その『処刑』が、将門に向けられていることを察知したわたしは、慌てて弁明する。


「将門くんは、関係ない。わたしがひとりでぼーっとしてたのが悪いんだから」


わたしの言葉に、義仲は少し気を悪くしたようだった。彼はふて腐れたように机に突っ伏した。


「…やっぱり、庇うのか」


スネたような口ぶりに、わたしは笑う。


「そうしないと、あんた、今すぐ将門くんをボコりに行くでしょ?」


わたしの問い掛けに、彼は、当然、と答えた。


「アイツは俺に盾突いたんだ。殴られても文句言えないだろ」


「…あんたはどうして、そんなにエラソーなのよ」


わたしが呆れてぼやくと、義仲はプイッと顔を背けた。


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