《MUMEI》
わたしのことは…
.

完全にスネた彼は、面白くなさそうに言った。


「お前だって、汐見に告られて満更でもなかっただろ?アイツ、金持ちそうだし」


なんだそりゃ、と半眼で睨むと、

義仲は、それに…、と小さく呟いた。


「アイツとなら、璃子は安心して毎日過ごせると思ったし」



…………え?



わたしは黙り込んだ。

義仲は自分の腕に顔をうずめる。


「…俺と一緒にいたら、璃子が危険にさらされるのはよく分かってたつもりだった。
それでも俺は、お前を護る自信があった。甘く見てた。
けど、今回のことで、痛感したよ。銃を突き付けられてるの見て、ゾッとした。
俺のせいで、こんなことがずっと続くなら、璃子は汐見みたいな『フツーのヤツ』といた方が、一番いいんだって、そう思ったんだ」


ぽつりぽつりと語る彼を見つめ、

わたしは、胸の奥から沸き上がる熱い想いに、

身を任せた。


.

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