《MUMEI》

「買い物でも行きますか? そろそろ新しい服、欲しがっていたじゃないですか」

そう言ってニッコリ微笑んでくる。

背中にぞわわ〜と鳥肌がたった。

何で知っているの? 少なくても彼には話していないことなのにっ!

「先輩が気になっているお店に行きましょうか? 最近駅前に出来たあのお店に」

何でそんなことまでっ!

しかも昨日、友達と雑誌を見ながら教室で話していたことなのに!

軽くパニックになっていると、彼は再び微笑んだ。

「俺、先輩のことなら何でも知っているんです」

度があるだろうぉ〜!

―放課後。

アタシは周囲をキョロキョロしながら、教室から出た。

一年生と二年生では、授業が終わる時間が違う。

今日はいつもとは違って、二年生の方が早く終わる。

だから逃れられるかもしれない!

アタシは注意を払いながら、遠回りして下駄箱にたどり着いた。

時間のせいか、誰もいない。

「良かった…」

ほっとして自分の下駄箱に向かっていると。

「遅かったですね、先輩。遠回りしてたんですか?」

ぴきっと、顔と体が固まった。

後ろを恐る恐る振り返ると、彼がいた。

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