《MUMEI》 「どっどうして…!」 「今日は一緒に買い物に行く約束してたじゃないですか? 俺が先輩との約束、破るワケないですよ」 サボりやがった! 「あっあのね!」 アタシはカバンを握り締め、彼に向き直った。 「そっそういうところ、やめてよ! 怖いのよ!」 「そういうところって?」 「ストーカー的なこと! 恐ろしくて夜も眠れないのよ」 「先輩、それって恋ですよ」 「恐怖体験よっ!」 ああ、もう! …どうあっても、言うこと聞いてくれない。 「…アタシのこと好きなら、少しは言うこと聞いてくれない?」 「先輩が俺のこと好きになってくれて、付き合うことになったら良いですよ」 悪循環だ…。 「それにね、先輩」 顔を上げると、彼はすぐ間近に来ていた。 そして下駄箱に両手を付き、アタシを逃げられなくした。 「えっ!?」 「俺、先輩の性格を熟知しているんです」 間近でにーっこり微笑んでも、怖いだけ! 「頼まれたらイヤと言えないこととか、強く出られたら引いてしまうところとか」 前へ |次へ |
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