《MUMEI》
冷たい目
「そうか…そういう事だったのか…。」

リョウはゆっくり立ち上がる。

「リョウ!大丈…夫‥?」


振り返り見たリョウの目。

余りに闇を帯びた冷たい目

それが加奈子の言葉を詰まらせた。


リョウは加奈子の方を見向きもせず、ただひたすら有馬だけを見据えている。

加奈子の問い掛けにも、存在すら無視するかの様に有馬を睨んでいた。


「何故俺みたいな者を作り出した…?」

「フフ…いい感じの目付きをしているね。それでこそ悪魔というものだよ。」

「質問に答えろ!」

「まぁまぁ、そんなに焦らない。言ったでしょう?我々の夢の為だって。」

「夢、だと?」


それだけでは何の答えにもなっていない。
リョウは眉を潜めて聞き返した。

「何だよ…その夢ってのは…?」


「クックックック…」


しかし有馬は含み笑いをしただけで、中々答えようとはしない。
それどころか、修二や美雪まで笑い出している。

何がそんなに可笑しいのか、全く分からないリョウと加奈子は苛立ちを隠せない。
「何が…何がそんなに可笑しいんだよ!?」

「クク…聞きたいかね?」

「だからさっきからずっと聞いてんだろうが!?」


いよいよリョウの怒りも爆発寸前だ。
頭に血が上ったように顔を真っ赤にしている。


「そんなに怖い顔しないで。今話してあげますよ、全てをね…」

有馬は一歩、そしてまた一歩づつリョウが入れられている檻に近いていった。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫