《MUMEI》
・・・・
 「・・・・エリザ」
 やさしく抱きかかえた腕が震える。
 知らぬ間にカイルはエリザを強く抱きしめていた。
 「オレもだ・・・・・お前を愛している」
 安らかな顔で眠るエリザにカイルは想いのすべてをその言葉に乗せ送った。
 間違いなどではない、カイルはそう確信出来た。エリザのこの表情がすべてを物語っているのだから。
 霧雨に濡れ張り付いてしまった金色の髪をそっとかき分け、たまらず頬に手を当ててしまっている。
 頬は冷たく、体温を吸い取るだけ。
 おもむろにカイルは服に手を入れ、何かを引っ張り上げた。
 それは燃えるように紅いルビー。
 首から外すとエリザの首へと掛けた。
 エリザの胸でまばゆく煌めく二つの光。
 紅と蒼。
 カイルはその光を見つめ、悲しい微笑みを湛えた。

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