《MUMEI》

泣きそうなのをガマンして、教師に追試の用紙を渡した。

そして気付いた。

…カバン、教室だ。

きっとアイツは帰っているだろう。

ど〜せ、ぼ〜としながら帰っただろう。

そして次の日には、何にもなかった顔でいつもの日常に戻るんだ。

浮かぶ涙を拭って、私は教室に戻った。

「あっ…」

しかしそこには、まだ帰っていなかったアイツがいた。

「…まだ帰ってなかったの?」

「あんなことされて…帰れないよ」

それもそうか。変に納得してしまう。


「じゃ、一緒に帰る? どーせ帰る方向、同じだし」

「良いけど…。その前にさっきのキス…」

「忘れて。犬にでも噛まれたと思って」

いつものように切り捨てる。

「…ムリだよ」

いきなり肩を捕まれた。

その顔は怖いくらいに真剣で…とても赤かった。

「聞きたい。キスした理由」

「…何となく?」

「本気で?」

いつになく真面目な顔で聞かれても、返す言葉はうまく出てこない。

今すぐにだって、逃げ出したいのに…。

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