《MUMEI》

「…俺はさ、真面目なキスがしたい」

「はぁ? 何言ってんの?」

「お前と」

「…本気で?」

「もちろん」

私の肩を掴んだまま屈み込んできた。

だから私は顔を上げて、眼を閉じた。

再び重なり合う唇。

離れてもお互いに気恥ずかしくて、言葉が出なかった。

だから私はそのまま、コイツの胸の中に倒れ込んだ。

「えっ、えっ?」

「…バカね」


私はぎゅっと抱き付いた。

「今は何も言わない方が良いのよ」

「…分かった」

顔を見なくても、優しく微笑んでいるのが分かる。

そのまま抱き締め返してくれるあたたかな体。

伝わる互いの心の音…。

二人の性格はこんなにも正反対なのに、今、きっと気持ちは同じだ。

このまま、この気持ちがずっと続けば良いと思った。

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