《MUMEI》 ヒミカの秘密アタシは唇を噛んで、顔を背けた。 一ヶ月前。 専門学校の屋上で、アタシは一人夕暮れを見つめていた。 陽が落ちる景色を、アタシは一人で見るのが好きだった。 そして落ちるギリギリのところで、いつもする儀式があった。 アタシの血族の者は、夜の眷属と言っていい。 陽が落ちると、眠らせていた血が騒ぎ出す。 それを抑える為に…。 アタシはいつも服に小型のナイフを隠し持っていた。 切れ味の良いナイフは、切った痛みを感じさせない。 けれど血をたくさん出してくれる。 マカに高校卒業祝いに貰った。 アタシはそのナイフで、自分の腕を切り付ける。 そしてあふれ出した血を飲み、理性を保つ。 もし見つかっても、うっかり傷付いてしまったと言えば良いだけ。 そして舐めていたら…気付けなかった。 キシが見ていたことに…。 とっさに言い訳をすることも出来ず、キシは笑顔で何も言わずに受け入れた。 アタシが人の血肉を摂取する体であることを―。 アタシもうろたえてでも、弁解すべきだったのに…。 その後、キシは恐るべき情報網を使って、血族のことを調べ上げた。 …その時点で、マカに言うべきだった。 前へ |次へ |
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