《MUMEI》

「前にも同じことしたくせに、学習能力がないのか、お前はっ!」

「はっ反省してます。反省してますから、少し声のボリューム落としてください。また気失いそうです…」

「あっ悪い…」

部長は黙ってしまった。私の手を掴み、腰を掴んだまま。

「…ところで、そろそろ離してくれませんか? 流石にもうプールには入りませんから」

と言うか、もう授業以外では入らない。

そう心に決めた。

「…いや」

「えっ」

いきなり捕まれた手と腰を引かれた。

そのまま抱き締められる。


「あの、部長?」

「お前はこうして捕まえて見ていないと、何するか分からないからな。―離さない」

そう言ってぎゅうっと抱き締めてくる。

「あの、これじゃあ着替えることも出来ないんですけど…」

「もう少し…このままで」

そう言った部長の体は、震えていた。

「…部長?」

「心臓がっ…止まるかと思った。お前が溺れているのを見て…」

「あっ…」

「前にもあって…。びっくりどころの話じゃないんだぞ?」

「…はい。すみません」

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