《MUMEI》

あたしは生徒会室の前に来ていた。

ノックをすると、すぐに彼の声が入ってきた。

「はい、どなたです?」

柔らかな声に、一気に胸が高鳴った。

深呼吸して、扉を開けて中に入る。

生徒会室は名ばかりで、彼の個人部屋になっていた。

中には彼一人。

彼専用の机とイスのセットの所にいた。

だからあたしはツカツカ歩いて、机を叩いて、彼の目を真っ直ぐに見た。

「―好きです! センパイ!」

「ありがとうございます。嬉しいですよ」

…あっさり笑顔で返された。

うん! ウワサ通りで安心した!

コレならこっぴどくフられる!

「本気で好きなんです!」

「ええ、嬉しいですよ」

彼は崩さぬ笑顔で続ける。

よしよし! 好感触! このまま行けば…!

「あたし、あなたがどんな悪人でも構いません! ずっと一目見た時から好きだったんです!」

「―そうですか」

今の返事、一瞬遅かった。

いよっし! ウザくなってきている。

「あたしが本気で好きなこと、分かってください!」

「…そうですねぇ」

彼はアゴに手をかけ、考えた。

うっし! あたしをフる言葉を考えている。

ヒドイ言葉であたしを傷付ける為の言葉を。

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