《MUMEI》

「出来ないなら、すぐに廊下に出てください。まだ生徒会の仕事が残っていますから」

机の上に広げている書類は、彼が仕事中だということを表している。

あたしは拳を握り締め、彼を正面から睨み付けた。

「―分かりました」

「えっ?」

あたしは机の上に膝をかけ、彼の肩に両手を置いた。

そして―一瞬だけど、彼の唇に触れた。

冷たくて、とても甘いキス。

すぐに彼から離れた。

「―コレであたしの本気、分かってくれますよね?」

泣きたいのを堪えた。

…正直、ここまで感情が昂るとは思わなかった。


「何っを…」

しかし彼は口元を手で多い、顔を真っ赤にした。

…アレ? この反応は予想外。

いきなりだったから、ビックリさせた?
 
でも…この反応はまるで…。

「…もしかしてセンパイ、ファーストキスでした?」

そう聞くと、耳まで真っ赤に…。

…ウソ。

でもあたしは反対に、血の気が引いた。

てっきり…と思っても、すでに遅い。

「えっええっと…」

慌てて何かを言おうとしたけど、コレで帰った方が良いのかもしれないと思った。

「じっじゃああたしの言いたいことは以上なので」

そう言いつつ机から降りた。

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