《MUMEI》

「ウチの高校に? 何で?」

「だってキミと一緒にいられるから」

アイツがへらっと笑えば、周囲にお花が見えそう。

…けれど十年の付き合いになる私には効果無い。

「アンタねぇ…。ウチの高校って結構レベル高いのよ? 今から頑張っても厳しいんだから、他のにしなさいよ」

私の部屋で、二人っきり。

会話はアイツの高校受験のこと。

テーブルに高校の資料を広げて見せる。

「あっ、この高校、男子校だけどウチから近いじゃん。レベルもアンタなら平気みたいだし、ここに…」

「ヤダ」

「じっじゃあ、ここは? ちょっと離れてるけど、私立だし悪くないわよ?」

「ヤダ」

「何でぇ!」

春。アイツはウチの男子制服を着て、ニコニコとウチの玄関先に立っていた。

「えっ、だって合格したし?」

しかも首席合格だって言うし!

私はがっくり項垂れながらも、アイツと学校へ行くことにした。

「嬉しいなぁ。またキミと一緒に学校に通えるなんて」

「…中学時代も一緒だったじゃない」

「うん。でも一年ぶりだから、余計にかな」

そう言って一年前と同じく手を繋いでくる。

「ちょっちょっと!」

「良いでしょ? そういう約束だもん」

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