《MUMEI》 望みおもむろにわたしは、顔をあげた。 周りを取り巻く暗闇を、睨み付けるように、 その先を、じっと見つめていると、 −−−大きく、揺らめいた、輝きを見た。 わたしは目を見開く。 …あれは? 視線の先の、そのまたずっと先に、 朱く灯った、光があった。 唸り声をあげて、風が吹き抜ける度、 その光も、大きく揺らめく。 わたしは、その朱い光に導かれるように、 フラフラと駆け出した。 ****** 「お前は…」 突然、信長が強張った抑揚で話し始めた。帰蝶は首を傾げる。その拍子に美しい黒髪が、サラリと肩から滑り落ちた。 繊細なその様を眺めながら、彼は再び、「…お前は」と譫言のように呟く。 「一体、何を望んでいる?」 帰蝶は眉をひそめた。意味が分からないとでも言いたげに。 前へ |次へ |
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