《MUMEI》 . 砂利に足を取られながら、坂道を駆け降りる。 …酷く胸騒ぎがした。 風に乗って運ばれてくる、なにかが焦げる異臭と、 誰かが叫ぶ、悲痛な声が入り乱れ、 わたしの意識をさらっていく。 …あの『朱』は、火の色。 ゴウゴウと、なにかが激しく、燃えているのだ。 なにかが、燃えて、その輝きがユラユラと大きく揺らいでいるのだ。 行かなければ。 そんな想いに取り付かれ、着物や足が汚れるのも気にせず、わたしは山道を駆け降りていく…。 −−−不意に。 遠くから聞こえてきた音に、 わたしの身体は凍り付いた。 ギリギリ、ギリギリ、と、 なにかが軋む、あの音…。 …ああ、待って。 行かなくては、ならないの。 あの朱い炎の中へ、 わたしは、行かなければ…。 しかし、『音』は待ってくれない。 . 前へ |次へ |
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