《MUMEI》

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わたしは、由紀をチラリと睨んだ。


「…なにが言いたいの?」


押し殺すように尋ねると、ちょうどパンを食べ終えた由紀は、外人みたいに肩を竦めた。


「俺らが卒業するまでに、何人の男子が仁菜にひっかかるのかなって」



…………『ひっかかる』って、

人聞き悪いな。



わたしはムッとして、別にひっかけてません、と冷たく否定した。


「わたしは悪くないもん」


意地になっているわたしに、由紀は首を横に振る。


「悪いね。断り方が曖昧すぎ。『オトモダチ』とか、意味わかんねー。相手だって期待するに決まってんじゃん。『アレ?俺、頑張ってもOK?』みたいな」


由紀のバカにした言い方に、わたしはカチンときた。


「わたしは悪いないッ!そうやって勘違いする方が悪いのよッ!」


ムキになって言ったわたしに、由紀は呆れたように、ハイハイと適当に返事をして、ベンチからゆっくり立ち上がる。

ムスッとしているわたしを見下ろしながら、彼は柔らかくほほ笑んだ。


「ちょっとは心、開いてやったら?みんな、勇気出して仁菜に告ったんだからさ…俺ら、高校生だぜ?今、恋愛楽しまないでどーすんの」


せっかく《花のモテ期》なのに、と由紀は笑う。

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