《MUMEI》

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わたしはすっかりブーたれて、トレードマークのベリーショートヘアをいじりながら、そんなの知らない、と突っぱねる。


「モテたいなんて、一度も思ったことないし」


そうぼやくと、由紀は、あーあー、とため息をついた。


「今の発言で、世界中のモテたいと思ってるヤツ、敵に回したぞ」


からかってくる由紀に、わたしは、うるさい!と、怒鳴りつけた。



−−−ちょうど、そこへ。



「こんなところにいた〜!」


呑気な男の声が聞こえて、わたしと由紀は同時に振り返る。

そこには、学食のパンが入った紙袋を抱えた男子生徒がいた。


彼は、クラスメートの直江 晃。

すらっとした長身のハーフ顔の男で、一部の女子たちから、『王子様』と囃し立てられている。


「もー!置いていくなんてヒドイじゃん!!」


探しちゃったよ〜、とかわいらしく膨れてみせた。

由紀はヘラヘラ笑って、ゴメンゴメン!と謝った。


「お前、選ぶの遅せーんだもん」


「だったら、一声かけてよ〜」


「だからゴメンて!」


アハハ、と明るく笑い飛ばす由紀を、晃は軽く睨んだ。

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