《MUMEI》 . わたしは膨れっ面の晃を見る。 「ちゃんとお昼、買えたの?」 尋ねてみると、晃は嬉しそうな顔をして、大きく頷く。 「学食、激混みだったけど、ホラ!」 抱えていた紙袋を、広げて見せてくれた。 袋の中には、たくさんの菓子パンが詰め込まれている。 「食べたいのあったら、あげるよ〜」 晃はにこやかに、そう言ってくれた。 たくさんの菓子パンを一通り眺めて、わたしは半眼で晃を睨む。 「甘いヤツのキライ。いらない」 バッサリ切り捨てると、晃はショックを受けたような顔をした。 「で、でも、コレ、美味しいよ!特大レーズンパン!」 彼はガサガサと袋をあさり、大きなコッペパンを取り出した。 わたしはそのパンを見、それから晃へ視線を流した。 「マジでいらないって」 あっさりと一蹴すると、晃はすかさず、なんでー!!と喚き出す。その声のうるささに、わたしは耳をふさぎ、顔をしかめた。 「男のくせにギャーギャー喚くな、甘いモン食うなッ!」 気色悪ッ!と本音を付け足すと、晃は傷ついたようだった。 「仁菜、ヒドーイ!!」 瞳を潤ませながら、由紀〜!と、隣で傍観していた彼に助けを求める。 由紀はヘラヘラ笑って、晃の頭を撫でながら、いじめないの、とわたしをたしなめた。 . 前へ |次へ |
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