《MUMEI》

桜色の唇から寝息をたてている。
眼鏡を外してやった。

二郎の透き通る白い肌へ蜜を吸う虫みたいに吸い寄せられる。
本人は無自覚なのだが、二郎の体臭は甘い、香しさのあまりに何度か噛んだことがある。
勿論、怒られた。

嫉妬狂いして二郎の体をめちゃめちゃにしたせいで禁欲生活が続いている……と、言ってもまだ二日しか禁欲してないが二郎は俺を我慢させてくれないのだ。
俺の頭がおかしいのか、二郎を見ると馬鹿になる。

女の子と付き合っていたときは年上好きだったせいか、駆け引きもあって大人の恋愛だった。
リード出来るとこはしていたし。

それが今となっては動物だ……歯止めがきかない。
乙矢の阿呆は二郎を猛獣使いと言っていたし……







虚しい欲は二郎を抱きしめて、紛らわす。
……いいにおいだ。

出来れば買ったベッドの広さを確かめたかった。
形の良い下唇を嘗めてみる。


「ん……」

寝返りをうつとき億劫そうだ、そりゃあそうか。
俺が無茶したんだ、何も言わないけど痛かったんだろうな。


「ごめん、大好きだよ。」

囁いてあげると、安心したような眠りに入る。
疲れていたようだ。

……そりゃあそうか、そのうちまた仕事も始まるらしいし。
次の仕事は某ブランドの春物の新作を着ると言っていた。
二郎はガタイも良くないし背も高い方ではないが、そのブランドのデザイナーに気に入られて去年からモデルとしても小さくだけど起用されている。
ちなみにそのデザイナーというのは高遠の親族だったり……あいつの周りは華やかだよな。


そうだ、新しい二郎のマネージャーにもちゃんと会って謝っておきたい。

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