《MUMEI》 カミナ先生は持っていたファイルから、一枚の紙を取り出した。 「はい、どうぞ。あたしの友人がやっている料理教室なの。場所はここから駅3つ先、駅ビル2階で毎週金曜日の午後にやっているわ。家庭的な料理が多いけど、勉強になるわよ」 「あっありがとう、ございます」 アタシは震える手で受け取った。 「それじゃ、頑張ってね!」 カミナ先生は笑顔で自分の席へ行った。 なのでアタシはキシを睨み付ける。 「…キぃ〜シぃ〜」 「言いたいことは分かりますけど、今は堪えてください。犯人はアナタの正体を知っているかもしれないんですよ?」 小声で囁かれ、アタシは口を閉じた。 「とりあえず、次、行きましょう」 キシに手を引かれ、職員室の奥へ行く。 そこは受付事務所になっていて、数人の事務職員がいる。 「カガミさん」 キシが笑顔で声をかけたのは、大きなお腹をさすっている女の人だ。 あっ、知っている。 主に宣伝を担当している人で、30代の女性。昨年結婚したって聞いたけど、オメデタになったのか。 このお腹の具合だと、6ヶ月だな。 「あら、キシくん。それにヒミカちゃん。おはよう。どうしたの?」 おだやかで優しい声と表情。幸せいっぱいなのが、伝わってくる。 「カガミさんにこの間教えてもらった料理教室、とても気に入りましてね。ヒミカも通いたいと言って来たんですよ」 前へ |次へ |
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