《MUMEI》

「さて、次は四階の実習室に行きましょう」

四階は調理実習室だ。

フロア全てが実習室なので、広い。

階段を上っていくと、四階には一人の男性がいた。

「ヤスヒロ先生、おはようございます」

「おおっ! キシにヒミカ! おはようさん」

にかっと豪快に笑うのは、カミナ先生の他にもう一人、肉料理を教える先生だ。

「朝から仕込みですか?」

「ああ、朝一に実習があるからな。でも二人とも、この実習には来ないはずだろう?」

「ええ、実は先生に紹介してもらった料理教室のことについてですが…」

「ああ、俺がやっているヤツか」

「えっ、ヤスヒロ先生ご自身が経営してるんですか?」

初耳だった。

「おうよ! 一人でも多くの人に、肉料理の素晴らしさを知ってほしくてな。3年前から始めたんだ」

「ヤスヒロ先生の創作肉料理は評判が良いんですよ。ヘルシーなものから、豪快なものまで多種多様ですからね」

「へぇ〜。確かにヤスヒロ先生の授業って、おもしろいもんね」

豪快で独創的な料理を教えてくれるので、生徒の間ではとても評判が良い。

「ありがとよ! ところでキシ、何か質問でもあんのか?」

「ええ…。ヤスヒロ先生のレシピは、他の人に教えたりもしてます?」

「レシピってもんでもないが…。まあ俺の料理教室では一通り教えるし、他の先生方にも意見を求める為に料理法を言ったりしているぞ」

「と言うことは、かなりの人数が先生のレシピを知っているわけですね?」

「まあな。簡単で覚えやすいのを重視しているからな。レシピなんてホントは必要ないぐらいだ」

そう言ってヤスヒロ先生は豪快に笑った。

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