《MUMEI》 思わずテンションも声も低くなる。 「ええ、屋上には温室がありまして、野菜を育てているでしょう? そこの担当者が、最後の方です」 その言葉で、アタシは誰だかすぐに分かった。 「サガミ…先生?」 「ええ。和食部門で野菜料理担当のサガミ先生です」 知った名だった。…と言うか、身近な人だ。 アタシのクラスの担任でもあり、野菜料理を教えてくれる先生。 「でもサガミ先生は野菜担当なんでしょう? よく肉料理の教室のこと、知ってたわね」 「それはまあ、後程。本人の口から聞きましょう」 屋上へは階段を使って行った。 重い扉を開けると、生暖かい風が頬を撫でた。 目の前には透明な小屋がある。 ここで野菜を育てているのが、サガミ先生。 恐る恐る扉を開けると、明るい照明の元には緑が一面に広がる。 「サガミ先生、いらっしゃいますか?」 キシが声をかけると、奥からサガミ先生が出てきた。 「やあヒミカくんにキシくん。珍しい組み合わせだね。どうしたの?」 柔らかい口調と物腰。 サガミ先生は癒やし系の先生として人気だった。 他が…個性が強過ぎるからなぁ。 「サガミ先生にこの間教えてもらった料理教室、とても良かったですよ」 「それは良かった。キシくんのご希望に叶ったかな?」 「ええ、それでですね…」 「あっ、もしかしてヒミカくんも興味を持った?」 前へ |次へ |
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