《MUMEI》 おおっと…。これは予想外。 察しが早い人だ。 「えっええ」 「興味を持ってもらえて嬉しいよ。あいにくとチラシは今、手元に無くてね。まあ無くてもすぐ隣だから」 「隣?」 サガミ先生が指差した方向には…隣のビルがある。 「あのビルの8階でやっているんだ。講師は僕の先輩夫婦。若い人向きの肉料理を教えてくれるんだ」 …なるほど。接点はあったんだな。 野菜料理担当という名前に、頭が回らなくなってた。 「ところでサガミ先生は、あそこの料理教室のメニューをご存知なんですか?」 「全部というワケではないけどね。ある程度なら知っているよ」 キシの問い掛けにも、サガミ先生は穏やかに答える。 「そうですか…」 「うん。話は僕の方で先輩達に伝えておくから、いつでも行くと良いよ」 「はっはい」 …やっぱり穏やかな人だなぁ。 終始ニコニコ。 でも、この温室の匂いは…。 「さっ、ヒミカ。用事は済みましたよ。行きましょう」 キシがまたアタシの肩を抱いて歩き出す。 「あっ、サガミ先生! ありがとうございました!」 「はい」 キシに強引に温室から引っ張り出された。 嫉妬深いヤツだな、本当に。 前へ |次へ |
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