《MUMEI》 秋のキス「もうすっかり秋だねぇ」 「あっああ」 「食べ物の美味しい季節よね。わたし、焼き芋とか焼き栗とか大好きなの! 毎年ついつい食べ過ぎちゃうのよ」 「へっへぇ〜」 わたしは今、彼氏と一緒に公園を散歩している。 小高い山の上に作られた公園には、秋の植物がたくさんある。 金木犀の花が咲き、紅葉も真っ赤だ。 しかしそれにも増して、彼氏の顔色が真っ赤。 理由は分かっている。 わたしと、手をつないで歩いているからだ。 でも彼氏は少し引き気味で、わたしに引っ張られているカタチになっている。 何となくオクテの彼氏だけど、優しくてわたしは大好き! だから三ヶ月前、わたしの方から告白した。 それ以来、遊びに行く約束はほぼわたしの方から。 男友達より優先してくれるのは良いけど…何だか無理やりわたしに合わせてくれているようで、ちょっと申し訳ないかな。 ふと目の前に紅葉が降って来た。 手を伸ばして取って、振り返った。 「どっどうかした?」 ビックリしている彼氏の目の前に、真っ赤に染まった紅葉を差し出す。 「ふふっ。同じ色。真っ赤っか」 「ええっ!?」 彼氏は片手で自分の顔に触れる。 熱いことに気付いたようだ。 次へ |
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