《MUMEI》
夢か真か
.


眠りから目覚めた濃は、酷く混乱していた。
瞼を開くなり、突然悲鳴をあげ、手足をバタバタと振り、暴れ回った。その様は、普段の冷静沈着な彼女からは、想像出来ない程の取り乱しぶりだった。

「待って!待って!!わたしはまだ…!!」

なにかを掴もうと必死にもがき、濃の、そのしなやかな腕は、虚しく空を切る。

虚空を見つめ、喧しく叫ぶ彼女の細い肩を、すぐ傍に控えていた信長は、ガッシリと両手で掴み、床に組み敷くようにして押さえ付けた。

濃の上で馬乗りになり、彼女の華奢な顎を乱暴に掴みあげ、無理やりに目線を合わせると、

彼は、大声で怒鳴りつけた。

「目を覚ませ、濃ッ!!」

その叫びに答えるように、
濃の瞳に、普段の輝きが戻った。

彼女はハッとして目を見開き、すぐ目の前にある夫の顔をまじまじと見つめ返す。信長だと認識すると、濃は暴れるのを止め、瞬時に大人しくなった。

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