《MUMEI》

私は配られた台本をペラペラとめくった。そしてため息をつく。

最後はやっぱり密着ダンスか・・・


「優子ー」

私は一か八か優子に助けを求めた。だが予想通り、一瞬にして跳ね除けられた。

「シンデレラはやっぱり継母と王子様と練習する必要あるわよね…」

優子はまるで独り言であるかのようにつぶやいた。いや、大声で言った。
私は手に汗を握った。

「もしかしてそれって…」

言い終わるよりも先に、徳山がやって来た。

「何なら三人で練習するか」

「そうね、徳山。怜やるわよっ」

優子が目を輝かせて言った。徳山もやる気満々だ。

「あのー…夏休みはいろいろと予定が入っておりまして…」

私は抵抗しようと、よくあるパターンを用いた。だが、無駄だった。

「あれ?あんたこの前まで夏休み暇だー…とかほざいてなかった?」

優子の最高の圧力がかかってくる。

言ったかも…


私はもう無理だと思い、あっけなく降参した。


優子には勝てない…


その後、いつ合わせをするかという話をして、解散した。
優子は私に近寄ってきた。

「徳山やっぱり嫌?」

「どういうこと?」

私は眉をひそめた。

「いやー…さっ、成田のこと好きになったじゃん、怜は」

「うん、まぁ…」

「あー…、ま、いいや。ごめん、忘れて」

優子が言葉を選んでいる姿を見るのは初めてだった。
私が唖然としていると、優子はそのまま逃げるように荷物を取りに行った。

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