《MUMEI》
トラック
「あのな、勝手についてきてんのはおまえなの。俺がおまえの意見に従う理由はない」
冷たく言い放つユウゴに、ユキナはさらに不満そうな表情を浮かべた。

「それは、そうだけど」
「俺は行く。……由井が最期に残したものだ」
「あの女のかもよ?」
「………それでも、気になるだろ」
「そりゃ、気にはなるけど……」
ユキナは何か考えるように唸ると、渋々といった感じで頷いた。

「わかった。行けばいいんでしょ」
「え、いやいや。別に無理にとは言ってねえし。嫌ならどっかで待っとけよ」
「いいの。一人になるよりはマシ!……多分」
 よっぽど一人になるのが心細いのか、ユキナはそう言った。
「まあ、俺はどっちでもいいけど」
「うん。じゃ、行こう」
ユキナは立ち上がった。
頷きながらユウゴも続く。

「っと、待って!!戻って戻って!」
先に道路へ出たユキナが慌てて走ってきた。
「なんだよ?」
「トラック」
 ユキナが答えた時、道路を右から左へと、重いエンジン音が通り過ぎた。
さっきの警備隊が戻ってきたのだ。

 二人は顔を見合わせたまま、グッと息を止める。

 トラックのエンジン音はなぜか、いつまでも聞こえてくる。
どうやらすぐ近くで停まっているようだ。

しばらくして、バタン!とドアが閉まる音が響いた。

そして、こちらへ近づいてくる複数の足音。

見つかったのか……

ユウゴはゴクリと唾を飲みこんだ。

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