《MUMEI》

長い長い夏休みに入った。夏休みというものは来るまでが楽しみなものだが、いざ夏休みとなると何をすれば良いかが分からない。
私の場合はバイトなんてできないから、余計にすることがない。優子は何だかんだで忙しそうにしているし、クラスの子を誘う勇気もない。


待ってればいいってもんじゃない…てのは分かってんだけどなー…


私はため息をついた。そして、机の上に置いてある携帯を取った。
ふと、成田のことが思いだされた。


あいつ…今日もラーメン屋でバイトしてんのかな…


そんなことを思うと、不思議と頭のあたりが熱くなる。
といっても、夏だから体中火照ってるのだが。

部屋のドアがノックされた。

「誰?」

そう尋ねるや否や、ドアが思い切り開かれた。

「お姉ちゃんっ」

見ると、露出度の高い服を着た妹、芽衣が立っていた。

「あんた…また破廉恥な…」

「何言っちゃってんの?普通にショーパンにキャミ重ね着してるだけじゃん」

芽衣は眉をひそめながら言った。

「…せめてパーカーはおるとかさー」

「てゆーか、お姉ちゃんこそ何ジャージでゴロゴロしてんのよ。色気のない」

芽衣は汚いものを見るような目で私を見た。
芽衣はギャルに憧れていて、中二のくせに化粧をバリバリしている。
まぁ類は友を呼ぶといいますか、芽衣の友達はそんな感じの子ばっかりだ。

「つけま垂れ下がってる奴に言われたくないし」

私がそう言うと、芽衣は顔を真っ赤にして叫んだ。

「なっ…関係ないじゃんっ」

むっとふくれた芽衣はそのまま部屋を出て行った。


何しに来たんだか…


とそんなことを思っているのもつかの間、芽衣が再びやって来た。

「そういえば、さっきお姉ちゃん宛に電話きたよ」

「え?誰から?」

私は目をぱちくりさせる。

「確か…綾音っていう人から」


あ…綾音?


「なんかいつでもいいから駅前のファーストフードに来てって」


なんで綾音が…?

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫