《MUMEI》
有馬の夢
「私にはね、幼い頃からの夢があったんだよ‥」


その幼い頃を思い出しているのだろうか、瞼をとじたまま、有馬は天井を仰ぎ見る。


「悪魔。

外国の書物に出てくる様な悪魔達をこの目で見たいっていう夢…。

でも実際にはそんなモノ存在しないだろ?

私はそれが許せなかったのだよ。
自分の夢が実現出来ない事がどうしても許せなかった。

だが、それでも諦め切れずにどうにかしようと懸命に勉強した。

最近の医学は発展に発展を遂げている。

だったら…

存在しない生き物をこの手で造れるんじゃないかと思ってね‥


それはもう勉強したよ。


何年もの歳月をかけて…


研究に研究を重ねて…


その研究のせいで何人もの犠牲者が出たって構わなかった。


‥これ、何だか分かるかね?」

有馬はそう言うと、手に持っていた小さな瓶をリョウに見せた。

中には透明の液体が入っていた。


「さぁな。薬か何かか?」
リョウが分かる筈がない。
もちろん加奈子も。

知っているのはこの瓶の持ち主である有馬と、それに何らかの理由で関わっているであろう、後ろに居る修二と美雪、この三人だけなのだから。

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