《MUMEI》 . 突然大声をあげたので、傍にいた由紀と晃がビックリした顔をする。 「なに?どーした?」 「仁菜、機嫌悪いね…」 戸惑ったように彼らが口々に声をかけてくる。怒りがおさまらないわたしは、べつにッ!と、不機嫌そうにそっぽを向いて頬杖をついた。 「昨日、ムカつくことがあったの!」 それだけッ!と言い切って、荒々しくため息をついた。 由紀と晃は顔を見合わせて、首を傾げ合う。 それから由紀が、口を開いた。 「『ムカつくこと』って、なに?」 わたしを心配して、尋ねてくれたのだろう。 だが、それがかえって、わたしに『彼』に言われたことを思い出させて、余計に腹が立った。 わたしは、由紀をギロリと睨みつける。 「聞くなッ!!思い出したくもないッ!!」 今にも噛み付きそうな勢いでわたしが怒鳴り散らすと、由紀は両手をあげて『降参』のポーズを取り、おー怖ッ!とおどけた。そのふざけた調子に、わたしはさらにイラッとする。 . 前へ |次へ |
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