《MUMEI》

.

突然大声をあげたので、傍にいた由紀と晃がビックリした顔をする。


「なに?どーした?」


「仁菜、機嫌悪いね…」


戸惑ったように彼らが口々に声をかけてくる。怒りがおさまらないわたしは、べつにッ!と、不機嫌そうにそっぽを向いて頬杖をついた。


「昨日、ムカつくことがあったの!」


それだけッ!と言い切って、荒々しくため息をついた。

由紀と晃は顔を見合わせて、首を傾げ合う。
それから由紀が、口を開いた。


「『ムカつくこと』って、なに?」


わたしを心配して、尋ねてくれたのだろう。

だが、それがかえって、わたしに『彼』に言われたことを思い出させて、余計に腹が立った。

わたしは、由紀をギロリと睨みつける。


「聞くなッ!!思い出したくもないッ!!」


今にも噛み付きそうな勢いでわたしが怒鳴り散らすと、由紀は両手をあげて『降参』のポーズを取り、おー怖ッ!とおどけた。そのふざけた調子に、わたしはさらにイラッとする。

.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫