《MUMEI》

やって来たのは近くの公園だった。
気づけばだんだんと薄暗くなっていて、公園にはあまり人がいなかった。

「おまえさー、来るんなら連絡くれよ」

成田がため息をついた。
私は成田に言われて気づいた。

「ごめん。頭になかった」

「はぁ?まぁいいけどさ…」



ほんと…最近ぼんやりしてるなー…



私は軽い自己嫌悪に陥る。

「そういや、さっき顔青かったけど大丈夫か?」

成田が気づいていたことに驚きを感じながら私は答えた。

「あー…うん。もう平気」

「そうか」

成田は笑った。
その笑顔に思わず胸が高鳴る。

「まぁ、坪井先輩は悪い人じゃないんだよ。女好きだけどな」

「そっか…」

声が少し震えた。
緊張しすぎているせいだった。

「そういえば何の用だったの?」

「あー…大したことじゃねーんだ」

成田は少しためらったが、少し照れくさそうに言った。

「ただ最近田中と愚痴言い合ってねーから、ちょっと言い合いてーなーって思ってさ」

その言葉に私の心がしとめられた。


やばっ。今の私、めっちゃ恋する乙女なんだけど…


「だからさー軽い気持ちで誘ったのに、まさかあんなムサイところでお前が待ってたのが相当びびった」

成田は少しからかうような口調で言った。

「なっ…あの文面見たら結構大事な用事かもって思うじゃん」

「そういうのを勝手な妄想っていうんだよ」

「はー?まじうざいんだけど」

「いやー、今思うとあの青ざめた顔は最高に面白かったなー」

「人の不幸を面白がるなんて最低なんですけど」


…この後長い間私と成田は言い合った。
私は成田としゃべることで、だんだんと心が弾んでいくことを改めて感じた。

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