《MUMEI》

「俺はショタでもなんでもいーけどそれ聖にぜってー言うなよ」

「わっ!な、長沢…なっ!わっ!」


俺口に出してた?
えっ?



目の前に箱ティッシュを持つ長沢…。


「あれ?聖は?」

そう言いながら誠はなんでもなさげに、俺からどいた。


「あー寝てしまいました」

長沢はテーブルの前にどかっと座り、誠も長沢に付き合うかの様に隣に座った。




俺はちょっと恥ずかしくてちょっと二人から離れた位置で体育座り。

二人は思ってたより気が合うみたいで話に夢中になっている。



長沢は変に気をきかせてティッシュを持ってきた訳じゃなく、鼻風邪をひいたみたいだ。

ゴミ箱を抱えながら何度も鼻を拭いている。

電車待ちでだいぶ外にいたらしい。

まったく実家が長野じゃなかったらこいつは一体どうなってたんだろう。


あー…きっと、今頃大風邪ひきながら、国道を狂ったように歩いていたのかもしれないな。


それでもこいつ、佐伯の顔見た途端ほっとした顔してた。
どんな目にあっても佐伯が好きなんだ。
俺だったら泣いちゃうよ、あーでも泣いても嫌いにはならないんだろうな。

その前にあんな阿呆な事はしないけど…。
つか、どうみても俺達は小学生に見えないからできないけどさ。

「あ、真依寝ちゃったからまた明日な」

「ああ、悪かったな邪魔して」


遠くからそんな声がして、扉が静かに閉まる音がした。


まだ意識はあったけど、俺は無理して起きなかった。

だって、頑張って俺を持ち上げてベッドに運んでくれる誠がなんかかっこよくて、それにふわふわして気持ち良かったから。


「おやすみ」


静かで優しい誠の声。



そして瞼に唇の感触。

優しく胸に抱き寄せられて、俺はゆっくりと意識を手放した。




最高の、クリスマスだった…。







朝佐伯がこの部屋のゴミ箱を見て酷く嫌な顔をした。





ティッシュのテンコ盛りになったゴミ箱は全部長沢の鼻水だと言っても佐伯は信用しなかった。











結局長沢は熱を出した。





END

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