《MUMEI》

私は今ものすごくいらいらしている。
7月ももうすぐ終わりを告げ始めていて、夏休みらしさをより一層感じるこの日このごろなのだが……
目の前にいる奴らが邪魔で仕方がない。


「ねぇ、なんで?」

私は顔をしかめながら尋ねた。

「えー?お家でラブラブしに来たの」

にっこりと笑う芽衣。その隣には、私の大嫌いな生物がいる。
芽衣の彼氏だ。

「お邪魔しまっす」

髪を金色に染めて、いかにも悪ぶった格好だ。

「いや、まじ帰って」

私はなるべく遠ざかりながら言った。

「てゆーか、芽衣の姉ちゃんマジキレイっすね」


うわー…きもっ



「えー、たっくんそれ私が傷つくぅー」

芽衣が精一杯のかわいい声を出していった。

「何言ってんだよ…お前の方が可愛いに決まってんだろ」

芽衣の彼氏はそう言って、芽衣を抱き寄せた。芽衣はそれに思い切り甘える…



あ、暑苦しい…



私は顔を引きつらせた。

その時、玄関のドアが開いた。

「よー、元気にしてたー?」

優子である。
他人の家のドアを勝手に開けるのはいささか問題があると思うが、優子の登場は私にとっての救いだった。

「優子さんっ。お元気でした?」

芽衣は目を輝かせながら言った。

「おー…芽衣ちゃん。相変わらず元気ね…。て…誰こいつ」

優子は芽衣の彼氏を指差す。

「あ、この人は私の彼氏」

「ど、どうも」

予想外の展開だったためか、芽衣の彼氏の声は震えていた。

「ふーん…」

優子は冷たい目で芽衣の彼氏を見つめた。そして冷たく言い放つ。

「中坊二人組はちょっとどっか行ってくんない?」

「え…?」

芽衣は驚く。

「いーから。早く行けっつってんの」

優子の口調が荒くなる。
怯えた芽衣たちは、急いで外に出て行った。

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