《MUMEI》 二人で話したいというマネージャーの意思を尊重してカフェに二人で移動した。 見送る二郎は不安げだった。 「俺はね、律斗君を引き取るって言い出したことにだって抵抗があったんだ。本気で二郎君にやって欲しいから欠点の無いようにしたかった。」 ゆっくりなカップを運ぶ動作で放つ言葉に腹が立つ。 「あんた、間違ってるよ。異質に見えても俺達は恋人同士だ。好きになって大切に思って、だから暮らしたいと思った。 律斗だってそうだ、俺達の大事な家族だ。いつだって本気なんだ、理解できないかもしれないけど二郎となら絶対幸せになれる。 それと、律斗のことを足手まといみたいに二度と言うな。」 胸のつっかえが取れたようにすっとした。 「君達がそう思っていても世間はどうかな。」 「周りのことなんて気にしてる暇ないし。」 俺なんか二郎にいつだって振り向いて欲しいから必死なんだ。 「それは随分と身勝手なんじゃないか。」 「そっちこそ俺達の平穏を奪おうとする。」 嫌な沈黙だ。 「貴方がマネージャーとして二郎を引っ張ってくれることは分かった、でも案外、二郎は自分で考えて決めていつの間にか成長してしまうんだ。 律斗のことだって、あいつなりに考えて出した答えだし、海外の仕事も、帰国しとから俺と棲みたいって言ってくれたのも向こうからだった。 俺は、二郎が出した結論を笑いかけてくれるだけで納得してしまう……せざるをえない、それが木下二郎という存在だから。 きっとね、あんたも負けるんだ。」 俺は何度も跪ずいた。 前へ |次へ |
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